分子からの群論解説(3)群の表現

前回:群の分類
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今回は、群を行列で表現することについて考えます。行列についてある程度知っている前提で進めることになるので注意してください。


群を行列で表現したい

群は「動き」の集まりであって、群の作用の対象は、回転や鏡映を取られるなどします。こうした操作は線形変換とも呼ばれ、行列によって表現することも可能でした。それならば、群の元を自然な形で行列と対応させてみることで、その行列の持つ特徴が群の性質に対応したものとなる気がしてきます。そうすれば、群をベクトルなどの線形代数の世界に落とし込んで具体的に考えることが出来そうです。

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分子からの群論解説(2)共役類と剰余類で分類

前回:群と対称性について

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今回は、群を分類することについて考えます。

 

「何を同じとみなすか」が分類のカギ

僕の身近にはあまりいませんが、植物やら魚やらにとても詳しいマニアの人は一定数います。その人と私たちの間には知識という隔たりがあって、私たちには識別できない繊細な違いというものが分かります。

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分子からの群論解説(1)群と対称性

この記事から、群論とその表現について書いていこうと思います。

 

量子化学を学んでいて群論を学ぶ必要を感じたので、いくつか本を読んだ上でその考えをまとめてみたいと思います。

 

数学的な厳密さは脇に置いといて、すんなりざっくり理解出来るような(というより自分の理解のための)記事にしていきたいと思います。ただし、途中で線型代数を前提知識とした話が出ます。

 

 

全体では、以下の内容を抑えます。

  • 群の導入
  • 共役類と剰余類による分類
  • (行列)表現の導入
  • 準同型写像
  • 大直交性定理や指標による既約表現の直和への分解

 

 

分子の対称性を数学っぽく表したい

アンモニア分子 NH3 は、水分子 H2O よりも「対称性が高い」と直感的に感じられます。でも、どうすればその「感じ」を表現することが出来るでしょうか?もし対称性を数学で上手く表現できるなら、分子内の電子の働きや性質を解析することも、比較的簡単になるかもしれません。対称性を数学的に扱うためにはどうすればいいでしょう?

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